緑内障は40歳以上の約5%に発症する、とても有病率の高い疾患です。

緑内障と聞くと、失明するんですか?と心配される方がいらっしゃいますが、一概にそうとは言いきれません。緑内障の中にも分類がいろいろあり、先天性のものや、他の疾患から二次的に生じるものもあります。以前は高齢者の病気という認識でしたが、最近は壮年発症も指摘されています。近視の方は緑内障を発症しやすいのですが、スマートフォンやパソコンの普及に伴い近視人口が増加していることが原因です。検査機が発達し、以前は時間がかかっていた視野検査も今では10分以内に施行できるようになりました。角膜の厚さまで考慮した眼圧検査や、網膜内神経層の厚さを測定できる光干渉断層計など検査機が増え、早期発見・早期治療が可能になっています。

治療薬も種類が豊富になり、すぐに手術になる症例は減少しています。手術で早く治したいと思われる方がいらっしゃいますが、手術しても残念ながら改善することはない疾患です。日々の体のメンテナンスとして点眼を習慣づけ、進行を遅くすることが最も重要です。

緑内障の種類

開放隅角緑内障

目の中の循環水(房水)は隅角と呼ばれる場所から眼外に流出しています。隅角の形態は正常で、その先の排水口が目詰まりして流れにくくなることで緑内障を生じるのがこのタイプです。緑内障といえば眼圧が高くなると言われますが、一概にそうとは言いきれず眼圧が正常な場合もあり正常眼圧緑内障と呼ばれます。

閉塞隅角緑内障

房水の出口である隅角が狭くなり、眼内に水が貯まるために眼圧が上がります。急性に生じることがあり、眼痛・頭痛・嘔気など激しい症状をきたします。この場合は早急に治療を行い眼圧を下げないと緑内障が急速に進行します。

落屑緑内障


虹彩が紫外線や加齢でダメージを受けるとフケのようなものが眼内に発生します。このフケが隅角に詰まると眼圧が上昇し緑内障を発症します。落屑緑内障は他の緑内障と比較して眼圧変動が大きく進行しやすい面があります。

緑内障の治療

点眼薬

全タイプの緑内障において基本となる治療です。副作用が少ないもの、1日1回でいいもの、2種類を混ぜて合剤にしたものなど様々な点眼があります。日常生活の一部に取り入れて、毎日忘れずに点眼を続けることがとても重要です

レーザー

緑内障治療のためのレーザーは3種類あります。①急性緑内障発作の時に行うレーザー虹彩切開術、②開放隅角緑内障に対する選択的レーザー線維柱帯形成術、③難治性緑内障に対する経強膜毛様体光凝固です。いずれの治療も長所短所がありますので、一概にレーザーのほうがいいということはありませんが、どうしても手術を避けたい状況では選択肢となります。

手術


緑内障の手術は眼圧を下げる手術であり、緑内障を治す手術ではありません。点眼治療やレーザー治療で十分に眼圧が下がらない場合に手術を行います。手術の方法には以下のものがあります。


低侵襲緑内障手術


手術器械が発達し、近年急速に普及してきた手術方法です。手術時間が短く、合併症も少ないため、点眼である程度コントロールできている方でも、点眼減量のために白内障手術時に同時手術で行います。

線維柱帯切開術

隅角に存在する網目状の組織(線維柱帯)を切開することで、房水を流れ出やすくする手術です。開放隅角緑内障、ステロイド緑内障、落屑緑内障に効果があります。選択的レーザー線維柱帯形成術の既往があると施行できない場合があります。


線維柱帯切除術


眼圧下降効果が最も高い方法です。以前は眼圧が下がりすぎる低眼圧症を生じることがあり、安定するまで術後の管理が難しい側面がありました。しかし手術方法が進歩し、器械を併用することで房水の流出量を調節するなどの工夫により低眼圧症のリスクは低下してきています。


白内障手術


白内障手術を行うだけで眼圧が下がる方もいます。閉塞隅角緑内障の方は、水晶体が厚いために隅角が狭くなっています。白内障手術を行うことで隅角が広くなり、房水流出が良好になります。