糖尿病になると、血管が徐々にもろくなり、酸素が行き渡らなくなったり、血管が破綻して出血したりしてきます。

糖尿病の三大合併症として、網膜症・腎症・神経症がありますが、いずれも血管障害が原因です。網膜症は糖尿病になった期間が長いほど発症頻度が高くなり、特に8年目以降で増加してきます。糖尿病網膜症は視力が保たれる場合もありますが、もし視力に影響が出始めた場合は改善困難ですので早期発見・早期治療が重要です。当院では、網膜症を発症していなくても半年~1年に一度は眼科受診をお勧めしています。


糖尿病網膜症は「単純糖尿病網膜症」「前増殖糖尿病網膜症」「増殖糖尿病網膜症」に分類されます。前増殖糖尿病網膜症になったら治療が必要です。また、どの病期でも糖尿病黄斑浮腫を発症する可能性があり、この病態が出現した場合はその時点で治療が必要となります。

糖尿病網膜症の治療

レーザー治療(網膜光凝固術)

酸素が行き渡らなくなった網膜をレーザーで焼灼し、生き残った細胞に酸素が行き渡るように再分配する治療です。片眼につき3~4回に分けてレーザーを行います。通常の外来診療で可能な治療法です。視力を改善する治療法ではなく、網膜症の進行を止めることが目的です。レーザー治療を受けることで、見え方が暗くなったり、視力が低下したりすることがあります。

抗VEGF硝子体注射

糖尿病の血管障害により酸素不足になった細胞からはVEGFと呼ばれるシグナル物質が分泌され、出血の原因になる新生血管が生じてきます。このVEGFを抑える薬剤を直接眼内に注射する治療が2010年以降行われ始め、糖尿病網膜症の主要な治療のひとつとなってきています。治療効果は高いのですが、薬剤の効果が切れると再発することがあるため病状によっては毎月投与が必要であり、高額な薬剤費がネックです。

ステロイド徐放製剤テノン嚢下注射

糖尿病黄斑浮腫の治療として以前から行われている治療です。結膜下に鈍針で粉状のステロイド剤を埋入します。粉は徐々に溶解して眼内に浸潤し3~4か月効果が持続しますので、治療効果が長く続きます。しかしステロイドの合併症として白内障・緑内障があり、何度も投与することは難しい場合があります。

硝子体手術

増殖糖尿病網膜症になると、網膜から新生血管が生じ、眼内出血をきたしたり、増殖膜(かさぶたのようなもの)が網膜表面に張ってきて網膜機能を低下させたります。この状態になると前述のような治療は効果が乏しいばかりか、徐々に病状は悪化し失明に向かうため手術加療が必要になります。