白内障は、目の中でピント合わせの働きをしている水晶体が濁る病気です。
水晶体を構成するたんぱく質が年齢とともに糖化し黄色く変色したり、紫外線により白く変性したりすることで生じます。発症を避けることができない病気で、その割合は年齢とともに増加し、70歳台で80%、80歳台では100%の方に発症します。医療体制が整っていない海外では失明原因になることがありますが、国内では失明に至ることはほとんどありません。発症しても進行はかなり緩徐なため、日常生活への影響が少ない場合は経過観察になることも多くあります。当院の方針としては、普通運転免許が通る視力(0.7)を基準に手術を勧めるかどうか判断しています。
その他、若い方であれば調節力があるためもう少し経過をみるケースや、かなり高齢で手術困難なため点眼加療とするケースもあり、個人個人の状況に応じて相談させていただいております。※当院では手術治療は行っておりません。手術が必要な場合は近隣の総合病院や開業医の先生に紹介させていただきます。
白内障の治療
点眼加療
現在国内で発売されている点眼薬は、すでに出現している水晶体混濁を除去する効果はありませんが、新たに混濁が増加するのを予防する効果があります。白内障は手術治療がとても進化したため、点眼加療で長期に経過をみることは推奨されませんが、例えば定年が近いので定年まで待って手術を受けたいという方や、要介護となり手術も困難な方などは点眼加療の適応があります。
手術加療
手術器械や眼内レンズの質が改良され、白内障手術はほぼ完成した術式となりました。キズの大きさは3mm以下となっており、点眼麻酔で手術が可能です。創部の縫合も不要な場合が多くなり、日帰り手術が一般的になっています。ただ、手術であることには変わりなく、軽微なものも含めると5%は合併症を生じます。手術前の数日から当日にかけて緊張もしますし、術後もキズがしっかり閉じるまでは安静が必要です。あまりに一般的な手術になったため、その日だけがんばったら終わりと思われる方がいらっしゃいますが、そこまで軽いものではありません。あまりに軽症のうちに手術を受けると、裸眼視力がかえって悪くなる場合があります。
また、みなさん検討されるであろう多焦点眼内レンズについても良いことばかりではなく、問題点もあります。多焦点眼内レンズのメリットは遠くも近くもピントが合うことですが、遠くと近くに光を分散させる結果ぼやけやまぶしさを生じることがあります。その頻度は約11%です。少なくない頻度ですので不満の原因となります。手術を受ける際はメリットとデメリットを十分に説明してもらえる施設で、納得して手術を受けるようになさってください。