視力検査というと、みなさんCの形をしたランドルト環を思い浮かべると思います。「上!」「右!」などと言いながら視力検査をした経験はどなたもお持ちですよね。しかしこのいわゆる視力検査ができるようになるのは3歳前後からになりますので、3歳になるまで本当の視力は分かりません。ではどのようにして子どもの視力検査を行うのでしょうか。

簡単なものだとドットカードや絵視力といったものがあります。うさぎやチューリップ、トラックなどを見せて答えてもらいます。1歳後半からできるようになります。

では、もっと小さい子はどうなるでしょう。実は0歳~1歳というのは視力が発達途中で、まだぼんやりしか見えていないのです。ですから、大人と同じ視力検査で評価するのではなく、まず目線が合うかどうか、片目を隠して嫌がらないか、斜視がないかを確認、そして屈折検査を行います。屈折検査とは近視、遠視、乱視の有無を測定する検査です。

ここで大事な事は調節力麻痺剤(点眼)を用いることです。我々は眼を細めたり、眼を凝らしたりすることで少し見えやすくなるのですが、このように眼に力を入れる行為を「調節をかける」と言います。この調節力は低年齢ほど強く、屈折異常が強い子ほど普段から調節をかけて見ています。そして調節がかかっていると眼の本当の屈折が測定できないのです。そのため調節力麻痺剤を点眼し、眼に入っている力を抜いてから屈折検査を行います。調節力麻痺剤には瞳孔を大きくする作用があるため、まぶしくなったり、ぼやけたりする症状が伴います。

子どもで特に頻度が高いのは遠視、乱視です。遠視は眼球の大きさが小さいため網膜にピントを合わせられない状態です。乱視は眼球にたわみがありラグビーボールのように楕円になっている状態です。この遠視や乱視の度数がつよいと、調節をかけてもはっきり見えず、視力発達不良(弱視)になります。しかしご両親からは、普通にテレビ等観ており、見えにくそうにしていなかった、という話がよく聞かれます。

このようなご質問をいただいた時私は視力と視野の違いについて説明しています。視力というのは、中心1点のみの解像度を測る検査です。日常生活では視野全体を使って物を見ているため、見えるか見えないかでいうと見えているのですが、解像度が低いので、手元の細かいものが見えてないんですよ、と説明しています。

以上のように子どもの眼の検査を進めていき、屈折異常がつよい場合は、視力発達不良になる危険があるため眼鏡作成をします。自分の眼で合わせられない度数を眼鏡で補うという感じです。眼鏡装用が必要なお子さんに、ご両親が眼鏡をかけさせたくないとの思いから眼鏡作成を拒否されることがありますが、このような行為はネグレクト・虐待の一種だと言われるようになっています。ちょっと過激な表現とは思いますが、眼鏡装用によって視力不良となる危険が減るのですから、正しい知識を付けていただき、眼鏡装用を前向きにとらえていただきたいと思います。